「なになに戦隊なんとかレンジャー」

ここは某県某市の秘密基地。
出動サイレンが鳴ったなら、
深夜番組の通販で買った筋力増強マスィーンで上腕二等筋を鍛えているレッドも、
鏡の中の恋人と逢瀬を重ねるブルーも、
玉葱を飴色になるまで炒めているイエローも、
クロスワードパズルの縦のカギ21番の答えを考えているグリーンも、
パソコンの中の美少女と今まさに一線を越えようとしているブラックも、
己の作業を中断し、屋上へと走らなければならない。
屋上で彼らを待っていたのは、超大型大砲。
先に来ていた作業員が方向を調節し、火薬を詰め、そして・・・
五つの大砲が次々と火を吹き、五人の戦士は大空をぶっ飛んでいった。
「あぁっ!!換気扇止めるの忘れた!!」
「あ――っ!そうだ、『プランガ―』だ!!あ〜、もぉ、何でもっと早く気付かなかったかなぁ。」
「お前ら、思い切りがわりィぞ!」
「アブト○ニクスを装着中の君には言われたくないものだね。」
「・・・・・・あー、早く帰ってゲームしてぇ」
      戦場へ―――――

事件が起こったのは女子大キャンパス内。
現れたのは怪人『露出狂』。
一人の薄幸の女子大生が、見せつけられそうになったその時、
「ちょいと待ちなぁ!」
声とともに天から五人の男が降ってきた。
なんとかレ―――ッド!!
なんとかブルゥ。
なんとかイエロー!
なんとかグリ――ン
なんとかブラック!
きれいに着地し、五人そろってはいポーズ。
「なになに戦隊なんとかレンジャー!!!」
さらにレッド、イエロー、グリーンの三人は続けて、
「只今彼女ボ集中!!」
周囲の乙女達にアピールする。
なぜ三人だけがこう言ったのかというと、ブルーは自分しか愛せないし、ブラックは二次元世界の美少女しか愛せないからだ。
「な、なんだキサマらは?!俺様の悦楽の時間を妨害しおってからに!」
「俺たちはなになに戦隊なんとかレンジャーだ!!さっき名乗っただろう!」
「いや、そうじゃなくて、何者なんだお前らは!」
「だからなになに戦隊なんとかレンジャーだっつの!」
「そーじゃなくって!!」
「だから俺たちはぁ!!」
「レッド、少し黙っていてはくれないだろうか」
オーバーヒートするやりとりに水をさすのはブルー。
「なんだと!俺はリーダーとしキュゴフゥ??!
ブルーに秘孔を突かれたレッドは大地に転倒し、小刻みに震えるのであった。
「レッド!!」
慌ててイエローが駆け寄る。
グリーンは先刻思いついたクロスワードパズルの答え、”プランガー”を忘れないようにするのに必死で、ブラックは先程までデートイベントをしていた例の二次元美少女とのこれからの展開を妄想するのに精一杯で、それぞれレッドの異変には気付く余地も無かった。
「ちくしょう・・・ブルーの奴め・・・いつか仕返ししてやる・・・なんか・・・落とし穴とか・・・落として、骨折しやがれバーカ・・・」
「しっかりしろ、レッド!帰ったらカレー食おう、カレー!な!!」
一方、ブルーは涼しい顔をしている。
「お見苦しいところを見せてしまい、大変失礼いたしました。」
怪人『露出狂』はそんな彼に少々恐怖を覚えた。
「お気づきのとおり、『なになに戦隊なんとかレンジャー』は偽名です。しかし、ある事情によって正式名称をさらすわけにはまいりません。そしてその事情を貴方に説明する必要は無いでしょう。なぜなら貴方は間もなく我々の手によって倒されるのですから。
体感温度の低下を感じながらも怪人『露出狂』は1センチメートルの勇気を振り絞る。
「フッ。キサマらにそれが出来ようか?」
「それはどういった意味でしょうか」
「俺は一人。それに対しキサマらは五人。五対一で勝利したところでそれは果たして正義といえるのかね?」
そ、そういえばそうだぁぁぁぁ―――――!!
叫んだのはカレーパワーで復活したレッド。ブルーはその横で「あー邪魔くせぇ」とばかりに舌打ちした。
「これはいわゆる集団リンチということにならないか?なぁ、ブルー。」
レッドはブルーの「うっせぇバーカ」という視線に全く気付いていない。
「お困りのようだね、レッドさんよぉ。しかし、これで万事解決だよ!」
言って、怪人『露出狂』はパン、パン、と高く手を打ち鳴らした。
すると、そこらの木やら壁やらから巧妙に潜んでいたらしき下っぱ戦闘員がぞろぞろと出てきて、なんとかレンジャーを取り囲んだ。その数、五十名。
「おぉなるほど!これならば集団リンチにはならないな!」
「でもレッド、これじゃぼくらが逆にボコられるんじゃない?」
「心配性だな、グリーンは。これぞ、ヒーローの黄金パターンではないか!なぁ、みんな!」
「早く家帰ってカレー食おうな!」
「早く家帰ってゲームしよう。」
ブルーは殺意にも似た視線を投げかけるだけであった。
「よっしゃ、いくぜェェェェ―――!!!」
レッドの雄叫びで、戦いは始まった。

下っぱ戦闘員は総勢五十名。ひとりあたま十名の計算だ。五人は散開して戦った。
「レッドの力は火の力!!」
片手には灯油缶、片手にはライター。
下っぱ戦闘員たちに手当たり次第に灯油をぶっかけ、火を放つ。
ひだるまになった下っぱ戦闘員は地面を転がり、他の戦闘員たちにも火が燃え移ってゆく。
「ブルーの力は水の力。」
水、すなわち魚をさばく刺身包丁。
その鋭い切れ味は、魚ならずともヒトまでも見事にかっさばいてゆく。
「イエローの力は雷の力!」
出力最大のスタンガンは下っぱ戦闘員を次々に気絶させてゆく。
「グリーンの力は木の力ぁ!」
巨木を切り倒すチェーンソウが下っぱ戦闘員に襲いかかる!
「ブラックの力は○○○の力!」
アブな過ぎるので伏字にしたが、黒い武器、いわゆるチャカの火を吹く音が辺りにこだまする。
そして―――――
残るは怪人『露出狂』のみとなった。
「覚悟はいいな・・・?」
詰め寄る五人。と、その時、
「動くなぁ!!」
振り向けば、発砲準備完了の警察官多数。
「騒乱罪ならびに殺人罪ならびに殺人未遂罪ならびに傷害罪ならびに銃刀法違反罪の現行犯で逮捕する!」
通報したのは、学生か、はたまた学校側か。
五人は、取り押さえられ、しょっぴかれていった。
そして、怪人『露出狂』もまた公然猥褻罪によりパトカーに乗せられたのであった。
しかし翌朝には五人は脱走したという。
頑張れ、なんとかレンジャー!
負けるな、なんとかレンジャー!!
たとえ、すぐ警察に捕まってしまうから正式名称を堂々と名乗ることが出来なくとも!!!

〜オハリ〜

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