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ロゼは雲の上の宮から、下界を目指し飛び立った。
雪に白く覆われた地上は、太陽の光をキラキラと照り返していて少し眩しい。
ロゼは、天の宮でもっとも強い処刑天使となっていた。
ロゼよりも強かった、ロゼの教育係の天使は、死んだ。
あの事件から、1年が経った頃のことだった。
溜が魔物の子を身篭ったことを知り、神は溜と魔物とその子の処分を決めた。
堕天した天使には、生殖能力が備わる。
そして、魔物と堕天使が交わると、強力な…天をも脅かしかねない悪魔が生まれる。
神にとっても、苦渋の選択だったという。
ロゼは、処刑の役を申し出たが、教育係に止められた。
「本当に、君に友が殺せるのか?」
といわれ、引き退がるしかなかった。
教育係が、行くことになった。
ロゼは、出立する師を門の前で見送った。
それが、彼の最後の姿だった。
溜を連れて行った、あの魔物に、返り討ちにあったそうだ。
そして溜は、子を産むために『生命の木』になったと、神は教えてくれた。
木となった溜は子を産み、魔物がそれを育てたが、彼らを処刑する命が出ることはなかった。
その理由を、神は教えてはくれなかった。
疑問ばかりが溜まり、ロゼの心に憎しみが生まれた。
溜をさらい、師を殺した魔物への。
―――「魔物は神の創造物ではないから。あれらは善い心を持ってはいない。」
師がずっと昔に魔物について云った言葉が思い出された。
―――ならば魔物など根絶やしにしてしまえば良いのでは?
封じられていた感情が、蘇る。
ロゼは任務以外でも、暇さえあれば地上へ下り、魔物を狩った。
体はますます赤くなったが、溜にもらった「ロゼ」という名がある限り、彼は平気だった。
そしてロゼは、天の宮のどの天使よりも強くなった。
ロゼに命が下ったのは、そんな折だった。
その年は異様なまでに雪が降り、地上も天の宮も真っ白になった。
その積雪の冷たさで、宮の『生命の木』が枯れはじめ、天の宮は混乱の渦に陥った。
『生命の木』は、一本しかないし、溜がいなくなってから、『母』の素質を持つものは生まれていない。
このままではいずれ天使はいなくなってしまう。
種の根絶に、天使たちは恐怖した。
神の命が下ったのは、その時だった。
道は残っている。
地上に根を下ろした溜を連れ帰ることは無理だが、その溜の産み落とした子に、確かに『母』の素質を感じる、と。
そして、ロゼはその子どもを天の宮に迎える命を受けた。
嫌がるようなら、力ずくでもかまわない、とも。
溜と、あの魔物の産んだ子―――
穏便に済ませる気は無い。ロゼは知らぬうちに笑んでいた。
笑ったのは、溜がいなくなってからじつに20年ぶりだとは、彼自身も気づかずに。
目的地の、森と街に囲まれた丘が見えてきた―――
To be full moon...
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
次のお話『Full moon』でロゼと流の物語は交わり、一つの結末に向かいます。
どうか、彼らを最後まで見届けてくださいますよう、よろしくおねがいいたします。
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