《47》

 

そして。

レッドは地下の個室に戻って体の治療と飛空挺型レーザー砲の操作の学習を再会し。

ブルーはブラックを引っ張って睦実の待つ地下研究所へ赴き3人で最後のデータ修正作業を開始し。

イエローは自分が気絶させた明仁・清一・ピンクを彼らの上司であるドラリンに引き渡して彼女にこっぴどく叱られ。

グリーンは何か手伝えることはないかとうろうろしていたら、怪我人は大人しくしていろと、これまたドラリンにこっぴどく叱られて個室のベッドに寝かされた。

 

 

午前4時。
目を覚まし体調を整えた明仁・清一・ピンク、そして光は二手に別れ巨大隕石を除く大型隕石の落下予想地域へ可動式レーザー砲を携え移動を開始。

午前5時30分。
地下研究所から10階の中央司令室へ機材を移動し、巨大隕石対策本部を同室に設置。

午前7時。
一般人への告知および地下シェルターへの避難を開始。専守防衛シェルター『ノア』への各都市に設置された地下通路が開放され、防衛省と警視庁の協力の下、国民の避難は多少の混乱はありつつも速やかに行われた。

午前11時25分。
全国民の『ノア』への避難完了が巨大隕石対策本部へ通達され。
対巨大隕石飛空艇型レーザー砲『グングニル』の発射スタンバイを開始。
最終データ処理完了。
燃料の充填を確認。
第一エンジン作動。
全システム正常に起動。
パイロット北島善太の搭乗完了。
第二エンジン、第三エンジン点火。

 

 

「いよいよなんだ……」

グリーンは個室のベッドの中で呟いた。
枕元にはラジオに似た機材が置かれ、そこから延びるイヤホンからは対策本部の音声が聞こえる。

骨折に加え、裏美へと人格交代した(つまり酒に酔って暴れた)ために疲弊し、一人ベッドで眠らざるを得なくなった彼に、中央司令室にいる皆の様子を知ることが出来るようにとブラックがこの機材を置いていってくれた。

重要な時に何も出来ない歯がゆさでグリーンの心は波立つが、骨折した左腕は勿論のこと、体全体が脱力して動かない。
悔しさが胸の中をまるで炎のようにうねり、その熱で心がどうにかなってしまいそうだ、とグリーンはシーツの端を握りしめ思った。

 

 

中央司令室の巨大スクリーンには、発射用意が完了した『グングニル』の外部カメラからの映像、『グングニル』のシステム、基地周辺のレーダー反応、基地屋上に取り付けられたカメラからの映像、それ以外にも無線通信の音声など、数個のウィンドウがその巨大な画面に表示されている。

そのスクリーンに向き合って、中央に立ち画面を睨んでいるのが巨大隕石対策本部最高責任者であり防衛省マル特部隊司令官であるドラリン。
彼女を囲むように室内にはパソコンをはじめ大量の機材が設置されている。それを忙しく操作するのは、マル特部隊のブレイン・笹林睦実と、なんとかレンジャーのブルーとブラック。

「『グングニル』システムオールグリーン。 いつでも発射できますよ!」

睦実が端的に上司へ報告し、ドラリンは頷くことでそれに応えた。
あとはもう、彼女の合図一つで、なんとかレンジャー・レッド……北島善太の乗ったこの強力な兵器は任務を全うするために空へ飛び立つ。

そして……無事に地上に彼が帰還するには、タイミングを間違えてはいけない。早すぎれば隕石を破壊する前にエネルギーが尽き、遅すぎれば隕石に激突してしまう。

幾多の修羅場を経験した彼女とて、緊張せずにはいられない。

「ねー、俺にできること何かないッスかー?」

そんな彼女に、呑気な声がかけられる。
イエローだった。

「……そうだな。静かに見守っていてくれ」

ドラリンの返答は、イエローが力になれることは今この瞬間ひとつも無い事を表している。
そりゃそうだ。
彼が操作できる機械は電子レンジとか、コピー機とか、家庭用ゲーム機とか、ビデオの留守録くらい。
頭だって、悪いわけではないけれどもブルーや睦実と並ぶくらい良いはずが、ない。
それは彼自身だって嫌になるくらい自覚している。

「あ〜、じゃ、グリーン…明美の具合みてくるわ」

言うなり、イエローは廊下へ続く自動ドアへと歩き出す。

「ああ、よろしく頼む」

「そっちも、がんばってくださ〜い、ねっ」

ドラリンの声に、彼は振り向かないまま返事をし、そしてドアの向こうへ消えた。

室内にイエローがいなくなったのを確認し、ドラリンは息を吐く。

「本当は、彼ら二人も地下シェルターに非難して欲しいんだがな」

「絶対拒否しますよ。彼らは正義の味方なんですから」

睦実がパソコンディスプレイに視線をやったままで口を挟む。そんな彼の言葉にドラリンは笑みを浮かべた。

「睦実もだろ?」

「司令官も、ですよ」

無言でキーボードを叩くブルーとブラックの口元にも、笑みが乗っていた。

 

    

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