合作!お花見大作戦!

お花見大作戦!!〜ホンゲダ編〜

今や司令官&メンバーの休憩室と化した秘密特殊部隊の司令室に鳴り響く電話。定められた対応をするドラリン、しかし一瞬で表情が一変し真剣そのものになる。神妙な面持ちで受話器を置き、彼女は深呼吸して一言。

「皆、注ー目ー!」

ホンゲダレッドはチョコの爪切りを途中でやめ、ホワイトはアメリカの国家機密解読のためパソコン画面と睨めっこしていた顔をあげ、ピンクは口紅を塗る手を休め、ホンゲダイエローは料理研究家の著書との一人討論を中止し、ホンゲダグリーンは夢の世界を漂っていたが無理やり引きずり出され、全員がドラリンを見た。

「皆、仕事だ!」

「…の割にはやけに楽しそうだな」

ホンゲダレッドは知っている。ドラリンがやけに張り切るときは自分達にとってろくな事がないも同然なのだということを。

「カビが脳まで侵食したんですよ」

ホワイトはさらりとドラリンの怒りゲージの針が触れるようなことを呟いた。

「善玉菌だったのね、そのカビ」

ピンクの悪気があるのかないのか分からない発言。

「意味違う…腸にいる菌の一種の通称だよ」

まともな、ホンゲダグリーンの台詞も今この場では何の意味もなさない。

「仕事? 最近身体なまりまくってたから丁度いいさ!」

元気なホンゲダイエローの声はドラリンにとっては渡りに船だ。

「その通りだイエロー! 私も腹筋が割れるほど鍛えたというのに、近頃全く出番がないときた!」

「…腹筋、割れてるんだ…」

今にも見せつけられそうな勢いだとホンゲダグリーンは思い、早急にこの場から逃げ出したかった。

「それはいいとして、今日の仕事の内容は桜の見事な佐々木公園の見張りだー! …ってどうした皆?」

ドラリンは顔を曇らせたメンバーがいることにいぶかしがる。

「花見か」

ホンゲダレッドは予想していたかのように、呆れ顔で愛犬の爪切りを再開する。

「花見ですね」

ホワイトは眼鏡をかけなおし目線をパソコン画面に戻して暗号化されている文の解凍ソフトプログラミングに着手した。

「って事はさっきの電話は仕事依頼じゃなくて有給休暇…または時間休の許可が取れたっつー電話ね」

ピンクは口紅の上にグロスを塗るため、化粧ポーチを探る。

「えーいいじゃん花見! 皆行こうよー」

ホンゲダグリーンは皆の台詞の通りに、花見と思い込んでいるようだ。

「花見客が問題を起こさないように警備するのが仕事内容じゃないのかい司令官?」

あくまで仕事と信じて疑わないホンゲダイエロー。ドラリンの普段の行いを彼は忘れているのだろうか…。

「何だ何だ、皆は行きたくないのか花見に!」

「やっぱりそうか、じゃあチョコを家に連れて帰ってからだな。待っててくれ」

「へ?」

ホンゲダレッドの言葉にドラリンは目を丸くするが、彼はそんな上司に目もくれず司令室をあとにした。

「オレはレッドが戻って来るまでにはこれ終わらせますから」

言うなりプログラミングを目にも止まらぬ速さで続ける彼には鬼気迫るほどの迫力さえ感じる。

ドラリンは何が何やら分からなくなった。

「何だかんだ言ってても結局は皆騒ぎたいのよねー」

ピンクの言葉にドラリンは、ほくそ笑んだ。

 

 

「準備はいいか皆ー?」

「おー!!」

ドラリンの呼び掛けに皆が声を揃える中、ホンゲダイエローは一人暗い面持ちでいた。

「どしたイエロー?」

「だって、だってやっと仕事だと思ったのに、ただの花見だなんてショックさ〜」

今にも泣き出しそうな意気消沈ぶりに、ドラリンはとっさに機転をきかす。

「イエロー、皆気が緩む時が一番、犯罪や騒ぎが起こる! 我々は一般花見客として潜入し迷惑な奴を取り締まるのだ! これも作戦なのだよ」

至極もっともらしいドラリンの言い訳にホンゲダイエロー以外のメンバーは、悪企みには頭の働く二枚舌という評価を司令官に与えた。

「さくさく行こうぜ〜!!」

「オー!!」

ドラリンの声に今度こそ全員が答えた。

「いざ、佐々木公園に出発〜!!」

 

 

佐々木公園は、いつもの閑散ぶりからは予想もつかぬほど人が賑わっていた。

まだ夕方だというのにそれぞれビニールシートやらゴザを敷き、宴会を始めている。

「場所取りしてあるのか? 司令官…」

ホンゲダレッドは肝心なところで抜けている司令官なので不安だった。

「ご安心召されよ一番桜の見事な場所、あそこだー!」

ドラリンが指差す先にはなんとナルヤ君が桜の木の根元で寝転がっているではないか!

「マジかよ!」

皆は思わず叫んでいた。

ナルヤ君とは、ついこの間ドラリンが悪の組織をでっち上げるために作った巨大ロボである!大きさは都庁なみ、逆三角のお顔、小振りの丸いお目々、ギザギザの口がチャームポイント。虫も殺せぬ心の持ち主であり、大変はにかみ屋さん。どうやら親には微塵も似なかったようだ。

そんな図体のでかいのが花見会場にいてなんでパニックにならないのか? それはこのロボの存在と安全性を国民みんなが知ってるから大丈夫なのさ。

変に隠すより堂々としてたほうがいいんだね♪

「ナルヤ君ご苦労、帰っていいぞ! 約束の最高級オイルだ!」

「あう、あう!」

ナルヤ君はドラリンから渡された一斗缶を持って、るんるん気分で防鋭庁ビルに帰って行った。

「…お前は一体何を考えとるんだ…」

「何も考えてませーん」

ホンゲダレッドの呟きはドラリンに二秒で一蹴された。

 

 

「それではこれからのホンゲダバーの繁栄を願ってー」

「乾杯!!」

一斉にグラスをぶつけ合い一気に酒をあおる。

「かー! うめぇ!」

「オヤジくさいですね司令官」

と、ホワイト。

「何おぅ!?」

「あれ? あの人達…」

ドラリンの台詞に聞き覚えのある声がまじった。 

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