指標なき街で

ガラス戸と壁の一部が大破した精肉店を出る若者の一団。

「おかえり、マイエンジェル達☆」

ホンゲダレッドから美少年写真をなんとか取り返したドラリンは幸せ一杯の笑顔でそれを眺める。

「公衆の面前で広げないでください。気色いです。」

ホワイトの辛口コメントも今のドラリンには無意味。

「これの良さはヤローにゃわかんないだろうよ」

「わかりたくもないです」

「それ返してもらう代わりにガラスとかの弁償代、全部司令官が出すことになったんだよね…そこまでして…」

すごい執着心だ、と、ホンゲダグリーンは呆れたが、彼の心境を知ってか知らずか、ドラリンは胸を張り、

「いーんだよ、私の懐は痛まないし」

「え?」

「領収書、切るってこと?」

ピンクの言葉にグリーンは上司の陰謀を知る。

「!それって税金ドロ…」

「馬鹿、声がでかい!」

ドラリンは慌てて彼の口をおさえる。

「庵に聞かれたらどうするんだ!」

庵こと なんとかブルーは気絶した なんとかイエローをぞんざいにひきずりながら自分達の少し前を歩いている。もし彼にこのことがバレたら…
腐った国家の手先と見なされた彼らは正義の殺戮集団・なんとかレンジャーに息の根を止められることになるだろう。

「ウチのリーダーにバレても同じようなことになると思いますけどね」

まぁせいぜい生きながらえて下さい、とホワイトは他人事なので冷たく呟いた。

 

「あ!みんな!」

ようやく探し人の姿をみつけ、なんとかグリーンは手を大きく振った…が、2者の距離が縮まるにつれ、その笑顔は消えていった。

「イエロー…」

ブルーは仮死状態のイエローの体から手を離す。それをブラックが受け止めた。

「殺してはいませんよ。2、3日は足腰立たないでしょうけど」

「ほんと?よかった」

グリーンは胸をなでおろす。あまり「よかった」状態ではないと思われるが。
前後不覚のカレー馬鹿と入れ違いに、ブラックは殺人カレーの被害者、もう一人のイエローを肩から降ろし、ホンゲダレッドにあずけた。その痩身で体格の良いホンゲダイエローをいままで担いでいたのは驚異である。
レッドは少し考えてから、

「チョコとゴロンボの見合いの件、考えておく、と右近に伝えておいてくれ」

と、この無口な男に言った。

「わかりました、伝えておきます!」

ブラックの代わりに なんとかグリーンが嬉しそうにこたえる。
その笑顔をみてドラリンはぼやく。

「あ〜あ…あの写真…」

窓から放り投げられ風にさらわれていった少年達を思い出して。

「無くなったものはしょーがないじゃない」

「…それもそうだな。また撮ればいいし!」

ピンクの言葉に元気を取り戻したドラリンは聞き捨てならない科白を口にした。

「え?」

「司令官…?」

「事件も無事解決ってことで、帰るか!なんとかレンジャーの皆、またな!」

言うなり駅に向かってさっそうと歩き出す。
ホンゲダの面々は挨拶も早々に彼女の後を慌てて追った。

「怪しい動きをしている司令官を街で見つけたら即捕まえて下さい!」

と言い残して。残されたなんとかレンジャーのグリーンとブラックは首を捻り、ブルーは呆れたような笑みを浮かべていた。

「我々も帰りましょう。」

「そうだね。…そういえば、レッドは?」

聞いて、グリーンは盛大に後悔した。目の前の冷血美青年の残酷な微笑みを見て。

「明日、帰ってきますよ…」

明日は有給休暇を使おう、そうグリーンは決意した。

〜終わり〜

緑文字=なま 青文字=白後奈美 の提供でお送りいたしました。

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