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閃光に眩んだ目が再び景色を映しだすと、そこには、右肩から先と、顔の半分が無くなった溜が呆然とこちらを見て立っていた。
「ケ…ガ……レ」
「溜!」
跳ねるように立ち上がり、駆け寄る。
膝から崩れ落ちる溜を、すんでのところで抱き止めた。
その時は、気付かなかった。
溜の身体から、血液が流れ出ていないことに。
「もう…だめみたい」
「なに言ってるんだよ!」
溜はゆっくりと首を振った。
「さっき…言えなかった…ことが、ある」
パキ…パキ…という、小さな、しかしはっきりとした音が耳に入ってきた。
「子どもを、産むために…木に、ならなきゃ…いけない」
「…え…?」
言葉の意味が、飲み込めなかった。
説明の代わりに、溜の身体の、欠けて中身が見えた部分から、若緑色の、植物の芽のようなものが幾つも吹き出した。
「もう…抱き合ったり、キスしたり、出来ない…ね」
芽は大きく伸び始め、また、欠落していない部分は、木の幹のように硬くなり始めた。
「元気な子を、産むよ。ケガレ、育てて……おねが…い…」
最後の方は、掠れてほとんど聞こえなかった。
安らかに笑みをたたえた溜の顔は、次第に木の皮に変化し、わからなくなった。
髪は葉を青々と繁らせた枝に、脚は地面に広がる根になり、
溜は、木になった。
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