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白樺にも、百日紅にも似たその木の前で、ケガレはがくりと膝をついた。

気が付くと、目から水が溢れていた。
かつて、溜が流していたように。

魔物の自分でも、流せるのか。そう、ぼんやり思っていた。



「知らなかったのか」

抑揚の無い声に、振り向く。軋む音を聞いた気がした。
彼のすぐ後ろに、処刑天使が立っていた。

「この方は、我々の母となるべきお方だった。」

天使は、何の感情も出さず、ただ風に揺れる溜の葉を見ていた。

「…母?」

水はまだ、頬を濡らしている。

「我々は、この木…『生命の木』の実から生まれる。神と交わり、木に変化できる天使は、稀にしか生まれない」

そうか、だから。

ケガレも、その枝を、空を、仰いだ。

――――だから溜は異なっていたんだ――――


「素質あるゆえに、あの方は一人だけを愛し、堕ちた。そしてあろうことか… お前のような汚らわしい生物と交わった」

天使は、昏い瞳でこちらを見た。
剣に貫かれたままの、その姿を。

「お前は安心して死ね。コイビトも子も、すぐに後を追わせてやる。」

朦朧とした頭から、一気に血が引いた感覚を覚えた。

「堕ちた天使と魔物が交わると、世にもおぞましい悪魔が生まれるというからな」

天使は、先程と同じように、木となった溜に向けて手をかざした。



させない!!


バチィィン、と、音がした。

ケガレの、口の拘束具がちぎれ飛んだ音だった。



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