魔物【まもの】
神の創造物ではない生命体。我々のこと。
大多数が人間や天使と同等の知能を持つ。
非常に多様な種族がおり、その中でも破壊衝動の強いものを「悪魔」と呼ぶ。
悪魔【あくま】
我々魔物の一種とされているが、その関連性は薄く、突然変異種と考えられている。
破壊衝動が強く、必要以上の殺生を好む。
両性具有であることが知られているが、深くは謎のままである。
天使【てんし】
神の創造物の一種であり、従僕。
天の宮でその一生のほとんどを過ごす。
神の代行として、「裁き」を行なう権限を持つ。
金色の髪と純白の翼をもつ。衣服を着ず、食事を摂らない。
生殖能力は無く、その出生方法はいまだ謎。
我々の天敵。
人狼【じんろう】
魔物の一種。
本来の姿は2足歩行の狼だが、首に拘束具を装着することにより人間に近い姿と理性を保っている。
拘束具をつけた状態でも尻尾と耳は抑えられないらしい。
鋭い嗅覚・聴覚を持ち、俊足としても知られる。
本来は肉食だが、社会に適用し、雑食となりつつある。
〈月黄泉堂世界百科事典第6版より〉
『Two Half moon』
町の北のあの丘には 行っちゃあいけないよ。
あそこには、
悪魔が棲んでいるからね―――…
¢
「流、学校に行くかい?」
問いかけに、子供は頭を振った。黒い、肩につかないくらいの直毛が揺れる。
深い青の瞳は、膝の上の本の文字を追ったまま。
問いかけた実の親は、諦めたような笑みを浮かべ、それ以上は何も言わなかった。
魔物の住むこの街には学校があり、6歳になると子供たちは皆学校へ通った。
しかし、この子供―名前を流という―は10歳になるが学校に入学していない。
流が学校で習う程度の知識を3歳の時点で習得していたこと
親のケガレが流の意思を尊重していること
街に流が学校へ行くことを望む者はいないこと
がその理由だった。
流は毎日、丘の上の自宅から街の図書館まで通い、本を読み漁る。
本の種類は選ばなかった。
強くなれるのなら、何でも。
流は、魔物としてはひどく弱い存在だった。
流の黒い髪は父親に、青い瞳と透けるような白い肌は母親によく似ていた(父親曰く)が、流はどの種の魔物とも異なっていた。
切り裂く爪も、噛み付く牙も、魅了する瞳も、流は持っていなかった。
ただ、翼だけは持っていたが、それは肉も皮も羽も付いていない、骨のみでできた、飛べもしない翼だった。
骨格のみの翼を持つ魔物など、流以外には存在せず、
街の魔物たちは流を異質な者として見た。
「向こうへ行け、『ボニー・ウィング』!!」
ボニーウィング――「骨の翼」。街の者たちが使う流の呼び名だった。
そこには蔑みと排斥の意しかない。
図書館へ向かう道をふさがれそう言われた流は、無表情のまま迂回する道へ進路を変え、その場を去った。
「何だあいつ」
「顔色一つ変えねえ」
拒絶の言葉を流に浴びせた子供たちは、苦々しい顔でその異様な翼の生えた後姿を見送った。
「気味悪い」
実際のところ流にとっては、街の者に翼のことで疎まれることなどどうでもよい事だった。
それよりも流が
・食物を口にしなくても生きられること
・両性具有であること
は絶対に知られてはいけない、とケガレは何度も流に言い聞かせた。
それは、一般的に悪魔の持つ性質として知られていたからだった。
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