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それから彼は『ロゼ』となった。

髪と翼がどれほど赤くなっても、『ロゼ』という名があるなら、この赤を綺麗だと言ってくれる友がいるなら、彼は恐れずに血に染まれたし、他の天使が『紅い天使』を褒め称えようとも平気だった。

ロゼは任務を終えると浴場で体を洗い、それから噴水の園で溜に会うのが常となっていた。

この人気の無い園は処刑で研ぎ澄まされた心を解きほぐしてくれ、溜の口数は少ないがその代わりに見せる多彩な表情は、仕事柄か生まれつきか、表情に乏しいロゼを和ませた。



ある日、いつものように園へ行くと、溜はいつにも増してぼんやりと、芝の上で膝を抱えていた。

「どうした?」

隣に座り、声をかけると、そこではじめてロゼの存在に気づいたように、溜は驚いて彼を見、それから安堵の息を漏らした。
このような溜を見るのは初めてで、ロゼは眉をひそめた。

「何があった?」

「……」

溜は、宙を見たまま、答えない。
しばらくの間二人は無言でいた。風と、木々のざわめきと水音が園を包む。

「ロゼ」

「ん?」

「天使も、罪を犯したら、裁かれる?」

予想外の溜の言葉に、ロゼは一瞬言葉を失った。

「なぜ、そんなことを?」

溜は答えない。じっと、問いかけの答えを求めている。
ロゼは少しだけ息を吐いた。

「天使が大罪を犯すと、堕天する。真っ黒な翼を持った堕天使は、即座に処刑天使によって処罰される…らしい」

「らしい?」

「堕ちる天使など、滅多にいないから」

溜は再び、何かを考え始めた。ロゼは何も言えず、溜の伏した目を見ていた。

「あのね、ロゼ、…もしも……」

「うん?」

溜はそこで言葉を失い、少し俯いてから再び顔を上げ、にっこりと笑った。

「なんでもない」

ロゼも少し笑んだ。
しかし心の中ではひどく動揺していた。

溜の質問の意味。
溜は何か罪を犯してしまったのだろうか?



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