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それからの溜は、考え事にふける時間が増え、ぼうっとしては、ため息をついていた。
そしてそれに反比例するかのように、心から笑うことが減っていったように、ロゼには思われた。

しかし変わらず溜は無二の友人で、ロゼは仕事が終わるたびに溜のいる園へ遊びに行った。

そして、2年という暦が過ぎた。

いつにもまして元気の無い溜に、ロゼは水で希釈したレンゲの蜜を持っていった。
溜はその場では飲まなかったが、後で飲むと約束した。

そして次の任務を聞きにロゼが行こうとした際、溜はいつに無く大きな声でロゼを呼び止めた。

「ロゼっ!」

振り返り見た溜は、自分の出した声の大きさに戸惑っていた。

「ううん。…あの…お仕事、がんばって、ね」

引きつった、笑顔を見せる。

「溜も、頑張れよ」

ロゼも微笑むと、二人は、別れた。



任務中も、溜の、あの泣いたような笑顔が頭から離れなかった。

あの蜜はちゃんと飲んだだろうか、と考え始め、あわてて思考を振り払った。

ここは戦場。
突然変異の巨大毒蜘蛛を前に、ロゼは大鎌を握り直した。

―――帰ったらすぐに溜に会おう。





ロゼが天の宮に戻ったのはそれから12時間後のこと。
柔らかな雲の上に降り立つと、宮全体の空気がいつになく慌ただしいことに気づいた。
胸の中に、なにかモヤモヤしたものが湧き出、ロゼは噴水の園へ急いだ。

いつもの薔薇のアーチをくぐると、いつもの景色が広がり、いつものように溜が芝の上で膝を抱えているはず、だった。

「何…だ……?」

穏やかな常春の園に、今まで存在しなかったもの。

おびただしい量の血液と、抜け落ちた白い羽毛。

それが、柔らかい芝の上に散らかり、その上をそよ風が通り過ぎる。

「溜…」

その名の主の姿は見えない。

「溜っ!」

園のあちこちを歩き、探し始める。

「どこに隠れている?」

噴水の陰も、沈丁花の茂みもアカシアの林も。

「なにをふざけているんだ?」

どこにも、姿は見えない。

「りゅう―――――――!!」





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