ΨΨΨ


「流ちゃん、手、出して。」

流は言われたとおりに、左手を彼の前に差し出した。

その白いしなやかな手を賢は取り、薬指に何かを通し入れた。
それは、賢の首の拘束具に付いている鎖の、輪のひとつだった。

「いつも、つながっていられるように」

細い指には無骨で大きすぎるぶかぶかのその指輪を流はもう片方の手で包み込み、頷いた。
それから、少し困ったような顔をする。

「俺には何も、渡せるものが無い」

「いいよ、そんな…」

流は少し考え、それから指輪と、賢の瞳を見、まっすぐに顔を上げた。

「代わりに、誓おう」

そして、賢に向かってきちんと座り直す。

「ちかう?」

「ああ。約束するんだ。賢に。そして、俺の魂に。」

流は冷たい空気を深く肺まで吸い込んだ。
そして音の無い空間に、朗々とした声が響き渡る。


「健やかなときも、病や、怪我のときも、

 喜びも悲しみも分かち合い、

 死が、二人に訪れるまで

 君と共に歩んでゆくことを、誓います。」

流は賢をまっすぐに見、そして賢の首の鎖の端に口付けた。


賢は、涙を流していた。

いつも笑顔でいる彼の、初めての涙を。

「僕も、誓います。君と、しあわせになることを」

そして流の指輪に口付け、



二人は唇を重ねた。





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