ΨΨΨΨΨΨΨ
目指す場所に辿り着き、その表面に静かに降り立つ。
空に浮かぶ雲は小さな水の粒だと習っていたが、この雲の表面は、まるで真綿のように柔らかい。
これも、『神』とやらの為す技か―――
目の前には大きな石造りの門と、その向こうに白い石で出来た建造物が見える。それを取り巻く、豊かな緑の色も。
門の向こうから金の髪と白の翼の遣いが出てきて、流に歩み寄った。
漆黒の髪に青い翼を背負い、衣服を着た姿。
その天使は明らかに仲間とは異なる流の風貌に少し驚きつつも、中に招じ入れた。
神が『母』の帰還を告げたらしい。
天使たちは流を歓迎した。
華美な装飾は無いが、重厚で、歴史が刻まれた、古い、しかし磨きこまれた建造物。
柱と柱の間から見える庭園から優しい風がそよぐ。
浴場に通され、体を洗う。何名かの天使が手伝おうと進み出たが、強く断った。
天使には服を着る習慣が無いらしく、新しい服が渡されなかったので、先に来ていた服を持ってくるよう頼んだ。
体を見せようとはしない流を天使たちは訝しんだが、詮索もせず、服を持ってきてくれた。
それほどまでに『母』というものは重要なのかと流は思った。
少し休むようにと、綺麗な小部屋に通された。
しかし流は眠らず、寝台に腰掛け、じっと拳を握っていた。
拳の中には、鋼の輪―――賢がくれた指輪。
殺してやる。
その言葉だけを、ずっと繰り返していた。
なぜ賢が殺されなければならなかった?
木になれだと?ふざけるな。
神が俺を生かしていただと?
俺の命を土台にして、新たな天使が生まれてくるのか?
賢を殺したあの天使のような?
殺す。
神も天使も皆、
この手で殺してやる!!
手を開く。
心を掌の中心に集中させると、そこに光が生まれた。
その光は、全てを焼き尽くせる光だと、流は解っていた。
目を閉じ、力を願う。
すると、手の中に武器が形作られた。
鈍く光る、黒い片刃の剣。
振ってみると、刀身は軽く、風を切った音を立てた。
何度も、それを振る。
日が傾き、暗くなっても、ずっと振り続けていた。
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