[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。



ΨΨΨΨΨΨΨΨΨΨ


吹雪の止んだ、白い丘の上で、ロゼは独り、残された左腕で雪を掘り返していた。

暫らくすると、新雪の下から、人狼の屍骸が出てくる。

少し安堵の息をつき、雪の中から引きずり出した。
頭部も、体も、雪の中に埋められていたおかげで断面は凍りつき、腐敗もしていない。

「何をしている?」

語調はさして鋭くは無いが、ロゼはその声に少しびくりとして振り向いた。

「埋めた場所を訊いてきたから、まさかとは思ったけど…賢の死体でなにをするつもりなんだい?」

このケガレという魔物の雰囲気に圧倒されそうになり、ロゼは何とか彼を睨み返すようにして答えた。

「…この人狼を、蘇生させる」

ケガレは金の目を大きく見開いた。

「本気か」

ロゼは彼をまっすぐに見、強く頷く。

「君は今までにどれほどの生物を殺してきた?賢一人を生き返らせただけでその罪を全て償えると、考えているのか?」


「いや」


ロゼは立ち上がり、ケガレと同じ目の高さになる。

「ただのエゴだ」

しばらくの間、二人は睨みあった。が、やがてケガレが口元を緩めた。

「片腕では大変だろう?俺も手伝おう」

雪を掘り続け凍傷になりかけたロゼの左手をとり、両手で包む。
ロゼはその魔物の手をひどく暖かく感じた。



前へ[*]    [#]次へ

作品Top    Text Top