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白い雪の大地に、赤い色がこぼれる。
ロゼは己の血で、蘇生の魔方陣を描いていた。
描き終えると魔方陣の中心にケガレが賢の体を安置する。
きちんと、離れ離れになった首と体を縫合させた上で。
ロゼの祝詞が始まった。
蘇生という大掛かりな奇跡を起こすには、想うだけではなく神への言葉を口に出して捧げる必要がある。
次第に、魔方陣が光を帯び始める。
熱線とは異なる、柔らかな光。
その光は賢の体だけでなく、ロゼやケガレの体の傷まで癒してゆく。
「凄いな…この光。君の右腕も、治らないかい?」
「無理だ。欠損部分が多すぎる」
右腕を失ってしまったことは、非常に痛い。しかし、ロゼはそれを仕方の無いものとして受け入れ始めていた。
やがて、賢の体が完全に修復された。
「あとは、魂を入れるだけだ」
それには、リスクがあった。
代わりに命をひとつ捧げなければならないこと。
ロゼは魔方陣の中に足を踏み入れようとした
が、
「??!」
その直前にケガレに体当たりされ、陣の外へ倒れこむ。
その隙に、ケガレが魔方陣に跳び込んだ。
「何をしているんだ!早く出ろ!!」
「誰かが代わりに死ななければならないのだろう?」
ケガレは笑んでいた。
「君が死んだら、誰がこの奇跡を最後まで行える?」
ロゼは、言葉を詰まらせた。
ケガレは気持ちよさそうに空を見上げる。
その足は、すでに灰に変わりつつあった。
そして思い出したように大振りのナイフを取り出すと、自分の右腕を切り落とした。
「ケガレ?!」
それを、ロゼに投げてよこす。
「もしかしたら、つながるかもしれない。試してくれよ。君の新しい腕になるか」
腰の辺りまで、ケガレの体は灰と化している。
ロゼは、どうしても足を動かすことが出来ないでいた。
「なん…で、そこまで…するんだよ」
震えた声しか出ない。
「俺は汚い奴だ」
ケガレは笑っていた。
「昔、堕天した天使を寝取った。子どもも、生ませた。そのためには、君の仲間すら殺した」
ロゼは冷水を浴びせられたような心地がした。
ケガレが、まさか…
「後悔はしていない。けど、どこかで、罪をあがなう機会を探していた。神ではなく、自分自身で裁く機会を」
胸、首、顎と、崩落は続いてゆく。
ケガレは、本当に嬉しそうに笑っていた。
そして、全てが真っ白な灰となり、散った
ロゼは、ケガレが投げてよこした右腕に手を伸ばした。
震える指で包帯と膏薬をはぎとり、その魔物が最後に残したそれを自分の欠落した部分と接ぎ合わせる。
魔方陣の優しい光を浴び、彼は動けずにいた。
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