《21》
「あー、これやね。グリーンの鞄。つかパンについてるシール集めてもらえるトートバッグじゃん!主婦かよ!」
窓ガラスを割って侵入した薄暗いライブハウスの楽屋で、イエローは一人ぼっちで突っ込みをしていた。
誰もいなくとも一人言を欠かさない、典型的なかまってちょうだい人間である。
「貴重品ちゃんとあるか〜? 財布とー、ケータイとー…って、着信23件?!」
留守電メッセージが大量に蓄積された携帯電話にイエローが驚いていると着信音(定型音1)が鳴り、イエローは慌てて通話ボタンを押した。
「もしもし?あー、やっとつながった!」
聞いたことのある声だった。
「ドラリンさん…?」
「あれっ?右近くん? なんで明美くんじゃないんだ?」
先にも述べたがイエローはグリーンがドラリンと交遊するのを快く思っていない。彼女がグリーンを見る目が、時折野獣のように光るからだ。
「グリーンに電話しないでくれ、って前に言いましたよね?」
「あー、いや、その話は後でいいとして、今すぐ皆でこちらに来て欲しいんだ!大丈夫。今の通話で場所わかるから迎えのヘリ寄越すから。じゃ、待っててくれ!」
通話は一方的に切られ、イエローは首を傾げた。