ヘリは40分ほどで目的地に到着したようで、運転手からの許可が下り5人はアイマスクを外した。
そしてヘリの窓越しに見下ろした風景は、とにかく山の中。うっそうとした手付かずの大自然……の、中に唐突に建っている日本家屋。
その瓦葺の由緒正しい住居の上でヘリはホバリングしている。

呆気にとられた5人を横目に運転手は後部座席のドアを開けると彼らに振り返り、

「生憎着地することは出来ませんので、お手数ですが足元の吊り梯子を使ってお降り下さいませ」

やはり、信じたくはないが目的地はココだったようだ。

突然やってきた善太と、招待状。
差出人は睦実と庵。
ヘリで移動。
やってきたのは山奥の一軒家。……すべてが突然すぎて、意味がわからない。

頭の中をクエスチョンマークだらけにしながら5人は母屋近くの庭先に降り立つ、と、縁側から中年の男が一人、やってきた。

「や、どーもどーも!」

羽織袴を着たその男に見覚えはないはずだった、が、どこかで見たことがある気がした。その、人懐こい笑みは。

「金髪のお嬢さんに、コワモテのおにいさん、レスラー体形のアンちゃん、ガタイのいい男前、クラスに一人いそうなにいさん、と。うん、これで全員だな」

彼はホンゲダ5人を一人一人確認するように見、そしてヘリにごくろーさん、と手を振った。
ヘリの運転手も会釈を返し、そしてヘリは去ってゆく。

「本家のヘリ私用で使っちまったな…こりゃあ久々に兄貴から説教かな。 ま、いっか」

一人呟く彼に、ドラリンが折を見て声をかける。

「失礼ですが、ここはどこで、貴方は誰で、なぜ私達はここに?」

傍から聞くと記憶喪失患者の開口一番の台詞のようだが、真実だ。

「あ、申し遅れてすまない。帯刀通孝(たてわき みちたか)といいます。ウチの右近がお世話になってるよーで、どうもありがとうございます」

そしてニコニコ笑顔で「ミッチーでもタカさんでも好きに呼んでくださいな☆」と挨拶する中年男性は、顔は似ていないがなるほど確かに右近の父親だ、と5人を納得させるに十分だった。

「ここは俺の城こと帯刀家っすわ。山奥もいーとこですけどゆっくりしてってください。…ま、話すより先に上がっちゃいましょーや」

どうぞどうぞ遠慮無用ですよ〜、と言いながらの通孝の案内に従い、5人は帯刀家に足を踏み入れた。

    ****************

通された部屋は、襖を開け放ち30畳ほどの広さをとった客間だった。
縁側に面しているであろう障子も閉められ、薄い障子紙ごしに月の明かりがほのかに室内を照らしている。天井に電灯は無いが等間隔で行灯が置かれているので視界に支障はきたさない。
照明以外には床の間近くに文机が一台、それと座布団が10数枚用意されているだけのがらんとした部屋。

通孝は5人分の座布団を並べ座るよう勧めると、「主役が来るまで、ちょいとばかしお待ちくださいな」と言い残し部屋を出て行ってしまった。

「あの人が右近君の父さんで、ここが右近君の実家……てことだよな?」

「うん。すごい山奥に住んでたんだね……でも、なんで僕ら呼ばれたんだろ」

大治郎と光は不安げに会話し、

「手紙は睦実と倉石からだったが、右近君が絡んでいることといい、なにかありそうだな」

「ああ。……不思議と嫌な予感はしないがな」

明仁とドラリンは思慮深く。

「なんかココ、ウチと近い気がするさー」

清一はひとりリラックスしてのびをした。
そしてしばらくの後、襖がガラリと開けられ、

「来てくれてありがとうな!!」

「皆さん、お疲れ様です。」

「……(会釈)」

善太、明美、連賀が姿を現した。
彼らもめいめいに座布団をひっぱってホンゲダメンバーの近くに座る。

「君たちも来てたの?!」

真っ先に声を上げた光に、明美はほほえみかける。

「もうすぐ、始まりますよ」

「なにが」と光が問う前に、襖が開いた。
開けたのは右近。彼もまた袴姿で、明るい色の髪を後ろで括ってきっちりとまとめており、普段のダラダラっぷりが想像つかないくらいにしゃんとしている。

「長らくお待たせいたしました。仲介人、そして新郎、新婦がこれより参ります」

右近の言葉に驚く間もなく、通孝がまず入室し、そして―――

「!!」

深藍の羽織袴を着た庵と、白無垢姿の睦実が、しずしずと皆の前にやってきた。

 

    

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