ハイド・アンド・シーク

すり鉢状の、非常に小規模な盆地の中心部で、 生い茂る草をかき分け、青年が二人、何かを探していた。
彼らは同じ服を着、同じ帽子をかぶり、同じ髪の色と髪型で、全く同じ顔立ちをしていた。
「電脳演算によると、このあたりのはずなんだよな、ビリー。」
「ああ。過去の文献から見ても、間違いないよ、ジャン。」
双子の発掘家は、最新技術を搭載した自作の探査機器をそれぞれ背負い、 装置本体からのばしたセンサーを地面に向けて、 長い調査の結果、そこにある、と確信している物を探している。 その姿は、念入りな掃除機かけにも見える。
「この地方には、いくつかの伝説がある。」
「『森の魔女』に、『パワーストーン』に、『炎の女神』、か。」
「それらの話は狭い地域にも関わらず、似通わない。 民話は、一つだけならば、どこででも自然に生まれる。だが複数の伝説が生まれるには」
「ワケがある。」
「そう。それこそ天変地異・・・超自然現象が起こったという印だ。」
「古代に落下した隕石か。」
「見つかったら大儲けだな。」
「隕石は、この星では微量にしか存在しない元素を多く含んでいる場合が多いからな。 グラムと金が同値で取り引きされるぜ、きっと。」
皮算用をしながらセンサーを動かしていると、突然、装置のサイレンが鳴った。
「「!!」」
二人は特殊反応の出た場所を、急ぎつつ、丁寧に掘り返した。
根が絡み合う、絨毯のような下草をめくり、土を押しのけてゆくと、
「これは・・・」
「大きいぞ・・・」
光る粒子の混ざる岩石が出てきた。
地中深く埋まっており、露出したのはその大きな本体の一部のようだ。
二人は同時に息をのんだ。
一人は急いで通信端末を起動させ、もう一人はこの発掘物の観察を始める。
「取引は本国で行うそうだ。くそっ、そこまで俺らだけで運ぶのかよ。 骨折れるぜ、ったく・・・そっちはどうだ?」
「放射性物質が多く含まれているが・・・ほとんど、エネルギーを出し尽くした後のようだ」
「なんだ。ぬけがらか。」
「ああ。だが、それを差し引いてもすごいぜ。ダイヤモンド含有率が90パーセント以上だ。」
「・・・マジかよ」
二人は電動ドリルでその財宝を掘り出すと、近くに停めていたライトバンに慎重に積み込み、 意気揚々と街に向かって出発した。
大きな穴のあいた、緑のクレーターに、風が寂しそうに吹き抜けた。




次はどの話をしようか?

火疾り    屍機巧

ともに    黒腕の魔女




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