ともに

長身大躯の男が一人、男3人を相手に立ち回っていた。
街中にもかかわらず、男たちは発砲する。しかし、
「なんでだよ・・・」
大男は飛来してくるそれを避けもせずに、
「何で平気なんだよ?!」
素手で、銃弾をはじいていた。
「信じられない・・・」
街路に一人、へたり込んでいる若い娘は、その光景を目の当たりにして呆然と呟いた。


それは、どこにでもある光景だった。
男3人が娘一人を取り囲み、因縁をつけている。
村から町へ、発展しつつある場所では、このようなことも少なからず起こってくるだろう。
そうは思ったが、この町に入ってすぐにこのような場面を見てしまい、 彼はいてもたってもいられず、肩に乗っている連れを 道端の木箱の上に座らせると、諍いの渦中に割って入った。
「やめろ。よってたかって・・・みっともない。」
「なんだてめぇ。やろぉってのかァ!?」

・・・・・・そして、今に至る。


「すごい・・・」
娘は腰が抜けて立てないまま、銃弾をものともしないこの青年を見ていた。
「発射された弾丸を捕捉して、飛軌道を触れることによりずらしているのか。 また芸が増えたな。」
突然の声に娘が目を向けると、彼女のそばの木箱に6つ位の少女が腰掛けていた。
今の言葉を、この幼い少女が言ったのか?と、娘は戸惑った。その直後、突然、 彼女が宙に浮いた。
「へへ・・・動くなよ」
男たちの一人が、少女の襟首を掴んで宙吊りにしたのだ。 あとの二人は既に青年によって気絶させられていた。
「このガキ、お前の連れなんだろ?」
男は少女のこめかみに銃口を押し付け、ニタリと笑った。
青年は長い両腕を下げ、構えを解く。
「形勢・逆転だな」
「・・・どうなってもしらんぞ。」
青年の呟きに、男の下卑た笑いが消える。
「あぁ?何て言っ・・・」
その時だった。少女が男の鼻柱を裏拳で殴ったのは。
バキン、という音と共に、鼻血が空に散り、更に青年の右拳がその頬に入った。
宙を舞う男の腕から開放された少女を青年は抱きとめ、安堵の息を漏らした。途端、
「この馬鹿が。」
少女が青年の頭を勢い良くぶったたき、青年は目を回しそうになったが、 これに一番驚いたのは礼を言おうと歩み寄って来ていた娘だった。
「いらぬことに首を突っ込んだ上に私まで危険にさらすとは、いい度胸だ。」
「?!あ・・・あの・・・?」
「ああ。娘、無事か?」
「あ、はい。どうもありがとうございました」
やはり、この少女の容姿と言動がいまいち結びつかない違和感を彼女は覚えていた。
「原因は、何だったんだ」
げんこつの痛みを克服した青年が、男たちを見やり、聞いてきた。
「道ですれ違った時に、突然ぶつかってきたとか言ってきて・・・」
「そうか。災難だったな」
この青年の声は低く、ぶっきらぼうだったが、娘は不思議と優しさを感じていた。
「おい。こいつらが目を覚ましたらまた面倒なことになる。行くぞ。」
青年は頷き、少女を肩に乗せると、この場から立ち去ろうとした、が、 娘は慌てて声をかけた。
「待ってください!近くに私の働く食堂があるんです。お礼を、させてください。」
少女は振り返って娘の顔を見た。
「娘、名前は?」
「ルーイと言います。」
「それでは寄らせて貰おうか。この馬鹿のせいでチョコレートミルク2杯分の労力を使った。 私はシェンナ。このデクノボウはバーンだ。」


石畳の大通りに面した小さな食堂には、二人以外の客はいなかった。
「シェンナちゃんは、食べないのかい?」
料理人でもある店の主人が焼きたてのパンを運んでやってきて、 先程からチョコレートミルクばかり飲んでいるシェンナににこやかに問う。
「咀嚼するのが面倒だ。」
言葉を失う主人に、ルーイが「少し変わった子なの」と耳打ちする。
「彼女は固形物が苦手なんだ。」
気を悪くしないでくれ、と言う前に、バーンの頭に再び鉄拳がはいり、危うく彼は 口の中のものをぶちまけそうになった。
「いらぬことを言うな。・・・しかし、普段から客の入りはこんなものなのか? 見たところ料理の味には問題は無い様だが。」
「うちの客は輸送業者と商人だからね。来る時は一気に大勢来るけど、 ここ2、3日はまぁこんなもんじゃないかな。」
主人は朗らかに言ったが、
「この町の者は食べに来ないのか?」
この言葉に、ルーイは顔を少し曇らせる。
「この町の人・・・カレット族の方々は私達、移民を嫌っているんです」
事情は、解らなくも無いんですがね、と、主人は諦めた様な笑みを浮かべる。
「ルウマ時代の話らしいんですが、当時はまだ小さな部族集落だったこの町に、 ルウマ帝国軍が侵攻してきたそうです」
シェンナも、バーンも、何も言わずに聞いている。
「その時に、たった一人で村を守った女性がいた。彼女は不思議な力で兵団を全滅させ、 そして自らも亡くなった。なんでも、炎を自由に操ったそうですが、それにちなんで彼女は 『炎の女神』と後々まで伝えられ、今でもこの町・・・カレット族の守り神として 崇められています。」
私も、それ自体は素晴らしい話だと思いますが、と、主人は溜め息をつく。
「『炎の女神』が命を賭して守った土地・・・だから、異物を許せないのか。」
「はい・・・すみません、こんな話・・・あ、そうだ、ゼリーなら、食べられますか?」
ルーイは空になった皿を重ね、シェンナの返事を聞く前に席を立った。
(お礼がしたかったのに・・・暗い気分にさせて、ダメじゃない!)
カウンターの奥の冷蔵庫に向かう途中で、勝手口が少しだけ開けられ、そこから 中をのぞき見る視線に気付いた。
「ラト?」
戸を開けると、やはりそこには8つになる彼女の弟がいた。
「どうしたの?入らないの?」
何も言わない弟の手を引き、客人の前に連れてゆく。
「私の、弟です。ラト、こちらはシェンナちゃんとバーンさん。」
ラトは黙っておじぎをした。バーンとシェンナもつられて、黙礼を返す。 すると、彼はルーイの手を抜け、足早に店内から出て行ってしまった。
「すみません、人見知りをする子で・・・」
主人も、苦笑いをしている。
先ほどの話からすると、この町には彼の遊び相手がいないことは容易に想像できた。 その孤独感は少年のこころを閉ざさせるには充分だろう。
『炎の女神』は、こんな町を望んではいなかっただろうに。
シェンナは心の中だけでそう思った。
「ところで、お二人は何の御用でこの町に?」
主人は努めて明るい声を出した。
「運輸でも仲買でもない、となれば、わかっているのだろう?」
シェンナの声は、からかっているようにも、とぼけた風にも聞こえない。
「やっぱり、『パワーストーン』、ですか。」
主人の声は強張っていた。シェンナは、頷く。
「失礼ですが、何故・・・?」
「色々、出来ないことがあってな。この体には。」


「あの二人・・・どういう人たちなんだろう・・・」
二人が去った後、ルーイは片付けをしながら呟いた。
「どこかの豪族のお嬢さんかもねぇ。あの歳で、相当な学があるようだし。」
主人が皿を洗いながら応える。
「とすると、あの大きい兄さんは付き人、かねぇ。肉親には見えなかったし。 足が不自由なようだったけど、相当重いものなのかね。『パワーストーン』を 頼ってくるなんて・・・」
「そうですね・・・」
相槌は打つが、主人の考えは、何か、しっくりこなかった。
あの二人はもっと・・・
「成功、するといいがねぇ」
主人は祈るように呟いた。


この土地の、『炎の女神』以外の名物が、町のはずれにある『パワーストーン』だった。
祠の中に安置された、――というよりは、それの周りに祠を作りつけた―― 一抱え以上もある石は、触れたものに光を浴びせた。 その光は、運がよければ、持病や怪我を治したり身体機能を向上させたりした。 しかし、運が悪ければ、最悪の場合、命を落とすこともあった。
故に、その石は奇跡の石と呼ばれているが、そのリスクの重さに、恩恵にあずかろうとするものは 滅多にいなかった。
バーンとシェンナは、その祠の前にやってきた。
シェンナは石の前でバーンから降り、ためらいもなくパワーストーンに手を伸ばした。その時、
「!!!」
はじけるような音と共に、祠はなぎ倒された。バーンの、拳によって。
少しの静寂のあと、バーンは目を見開き、己の硬く握り締めた手と、倒壊した祠を見比べた。
「・・・俺・・・は・・・?!」
戸惑いながらシェンナの顔を顧みた。彼女は無表情のまま、何も喋らない。
「俺・・・俺は・・・」
バーンは駆け出した。
その場から、逃げたのだ。


「・・・馬鹿のすることは、私の予想を軽く越えるな。」
一人残されたシェンナは呆れたように呟いた。
実際のところ、彼女はかなり驚いていた。
―――うん、僕もかなり驚いた。
突然、頭の中に声が響いた。シェンナは、今度は驚かなかった。
「自我をもっているのか」
目の前の、『パワーストーン』と呼ばれる石に小声で話し掛ける。
―――最近・・・といっても、町がこんなに大きくなる前くらい、からね。
再び、声が響いた。
「悪かったな。家を壊してしまって」
―――いいさ。屋根の無い時間の方が長かったからね。久しぶりの空が、気持ち良いよ。
「ああ。今日は良天だ。」
―――君、力が欲しくて来たんじゃなかったのかい?
シェンナは少し、考えてから、
「そのつもりだったが・・・考えがまた覆りそうだ。 確定するまで、話し相手になってくれないか」
―――いいよ。時間はたくさん有るしね。
「・・・私もだ。」


何という事をしたのだ。
バーンは己を叱責しながら、街中をあても無く歩いた。
力に任せて、自分の思い通りにしようとする。
それでは、傭兵だった頃と何も変わっていないではないか。
しかし・・・どうしても嫌だった。
彼女が力を手に入れて不自由の無い体になったら、自分はもう、不要のものとなる。
彼女にとって・・・いらないものとなる。
それが、嫌だった。
あの時、戦場で彼女に拾われていなかったら、自分は今、こうして此処にいることは無かっただろう。 この恩は、返しても返しきれない。だから、ずっとそばにいたい。
「そんなに、力が欲しいのですか?」
自分では、駄目なのだろうか?
自分では、彼女の支え木にはなれないのだろうか・・・
沈んだ思考を抱きつつ路地を歩いていると、角を曲がったところで、 腰に何かがぶつかってきた。見下ろすと、それは少年――先刻助けた娘の弟、確か、名前は・・・
「ラト?」
少年は、バーンの顔を見上げるなり、泣き出した。 今までずっと堪えていたのだろう。大粒の涙が溢れては、落ちた。
「おい・・・どうした?」
戸惑うバーンに、ラトは必死の形相で言った。
「助けて・・・っ!」


―――何故、力が欲しいんだい?
「やって来る者に、いつもそう訊いているのか?」
―――できれば、思い留まって欲しいからね。
「何故だ?」
シェンナの頭に、溜め息をついたような音が響く。
―――僕は、力を与えるんじゃない。その人の身体能力を高めたり、 潜在能力を引き出しているだけなんだ。 実際、光を浴びたことによって、その人がどうなるのかは、僕にも分からない。 その力を使いこなせればいいけど、力に体がついていけなくて、 死んでしまうときもある。・・・だから
「炎の女神も、そうだったのか。」
―――・・・うん。彼女がここにやって来る直前、僕の目の前で、人が死んだ。
声は、か細くなっていた。しかし、シェンナは聞くのを止めなかった。
―――彼は、僕の力を使って、わざと死んだ。初めてだった。命が消えるのを見たのは。
その時だったんだ。彼女が僕に触れたのは。僕はそれに気付かずに、ただ泣き叫んでいた。 結果、今みたいに力を制御できていなかった僕は、彼女の超然的な力を呼び覚ましてしまった。 彼女は、割と長い間、その力を上手く抑えていられた。けど・・・
「村を守ろうとして、全ての力を解放したのか。運が悪かったのは、 その力が炎の力だったということだな。あれは、私でさえ、使うには危険を伴う。」
―――?!君は、すでに力を使えるのか?
その声をシェンナは聞いていなかった。ハッと顔をあげ、周辺を見回した。
「・・・切れた」
―――え?
「あの馬鹿が・・・。すまない。少し、行ってくる。」
言って、彼女は、その2本の細い足で立ち上がった。


ラトにつれられてきたのは、商業区の路地裏の、小さい酒場の前だった。
バーンとシェンナがルーイたちの店を出た後、あの路上で叩きのめした3人の男たちが 仲間を引き連れて店に押し入り、ルーイをさらっていった、とラトは話した。
「ここに、入っていったのか」
ラトはバーンの言葉に頷き、
「あいつらのあと、つけてって・・・でも、ここ、怖い人ばっかいるとことで・・・」
ラトの声に、再び嗚咽が混ざる。
「泣くな。姉さんは必ず助ける。」
頭に大きな手がのせられ、ラトは涙をぬぐい、頷いた。

店の戸を開けると、中には10数人の男と、奥に、気絶しているのであろう、 床に横たわっているルーイの姿が見えた。
「やっぱりきたか」
「ルーイを返せ」
彼らのニヤニヤ笑いが、声の出たものとなった。
「いいぜ。どうせこの女はお前を呼び出すためのエサにすぎねぇからな。 ただし・・・テメェの命と引き換えだ!」


中から荒々しい音が連続的に響いてきて、 店の外で待っていたラトはビクリ、と飛び上がりそうになった。
いったい何が起こったのか?姉は無事なのか?
彼はおそるおそる、中を覗こうとした、そのとき、
「おい」
背後からの声に、今度こそ悲鳴を出しそうになった。
振り向くと、今まで誰もいなかったところに少女が立っていた。
あの、お兄さんの仲間だ、と、ラトは思い出す。
「あの・・・」
なぜここに?と訊こうとした時、戸が開かれた。
しかし、誰かが中から開いたわけではなく、 血にまみれたバーンの体が、戸にぶつかって開いたのだ。
彼はドサリ、と地面に落ち、動かなくなった。
開かれた戸の向こうから、沢山の大人の笑い声が生々しく聞こえてきた。
ラトは、崩れるように地面に膝をついた。体が震えていた。
「事情は知らんが」
シェンナの声は変わらず冷淡だった。
「なんとなくはわかってきた。そこのガキ、助けたいものがあるなら、 自分でやるんだな。」
その冷たい瞳にラトは怯えた。が、地面に広がる赤が目に入り、彼は 感情を抑えきれなくなった。
「どうやって!?あいつら、バーンだって殺しちゃったよ! 僕が敵うはずないよ!!」
ラトに睨まれ、少女の目がスッと細くなった。
「殺されていない。死んでいるものを、どうやって殺すことができる?」
その言葉の意味がラトには理解できず、彼は何も言えなかった。
「それに、あやつらを倒せ、などと言ってはいない。それは私が今からすることだ。」
「え・・・?」
「裏口を探して中に入れ。なるべく早く・・・ 長くても10秒以内にルーイをつれて外に逃げろ。いいな。」
彼女の顔には、気負いも恐怖もなかった。
ラトは何かに操られているかのように走り出した。
その後姿を見届け、
「さて・・・」
シェンナは、バーンの体を飛び越えて、暗い室内に身を投じた。

「どうしたお嬢ちゃん?ここはガキの遊び場じゃねぇぜ?」
シェンナは答えなかった。
部屋の中心に、連射式機関銃が置かれていた。男たちも皆それぞれに 火器を手でもてあそんでいる。部屋の隅に山積みになっている木箱からも 火薬のにおいがした。
「闇ブローカーか。巣食うには丁度良いかもな、この町は。」
少女の声に、男達はざわついた
「私の屍人形が世話になったな。」
「なっ・・・テメェ、一体・・・?」
「魔女は過去の遺物だと思っているクチか?ならば覚えてから死んでゆけ。 魔女の怒りは恐ろしいということをな!」
暗い一室は、刹那、赤光に満たされた。


再起動したバーンが目を開けると、シェンナのいつもと変わらぬ仏頂面が視界に飛び込んできた。
「!」
「ルーイとラトなら帰ったぞ。お前に礼を言っていた」
「え・・・?」
「あいつらなら、私が潰しておいた。」
バーンの呆けた顔が、みるみるうちに強張ってゆく。彼は地面に額をこすりつけた。
「すみませんでした!」
勝手なことに首を突っ込んだ上に、あっけなくやられて、シェンナにまで迷惑をかけてしまった。 自分が、ひどく情けなかった。
「謝るなら、こいつに謝れ。」
シェンナの声に顔をあげ、彼は、いま自分がどこにいるのか、ようやく気付いた。
彼の前には、パワーストーンがあった。
「あ・・・すみませんでした!祠を、壊してしまって」
再び、必死に頭を下げる。その様を見て、シェンナは口元を少し緩めた。
「・・・私は、屍人形を動かしている間は歩けない。」
バーンは、顔を上げて不思議そうにシェンナを見た。
「物を食うことも出来ないし、高度な呪文を使うことも出来ない。 力の半分は、お前の体に回しているからな。」
「・・・そう・・・だったんですか?!」
そうまでして何故、自分を動かしているのか、とバーンは訊こうとしたが、 シェンナの言葉がそれを遮った。
「だから、パワーストーンで、力を増やそうと思った。 お前を動かしている時も、変わらず動けるように。」
「・・・!!」
自分はきっと、すごく嬉しい顔をしているに違いない、と、バーンは思った。
「では、マスターはもう、歩けるのですね!」
シェンナは今は石の横に座っているが、その足で立てるのだ!
「いや。」
「え?」
「力を、貰うのはやめた。だから、私は歩けない。バーン、早く肩に乗せろ。」
バーンはまたもや呆然としてしまった。
「乗せろ、と言っている。」
「は、はい、マスター!」
あわててシェンナの軽い体を持ち上げると、左肩に乗せた。と同時に頭を叩かれた。
「マスターと呼ぶなと、いつも言っているだろう」
「・・・すみません。でも、なんで、やめたんですか?」
バーンの「なんで」に、彼女はすぐには答えなかった。
「・・・先刻、お前が停止したせいで、久々に歩いた。で、思った。面倒くさい、と。」
自分を見上げるバーンの視線から、シェンナは目をそらし、空を少し見上げていた。
―――本当に、それだけ?
頭に、悪戯っぽい声が響いた。その声はバーンには聞こえていないようで、
(それだけだ)
シェンナは心の中だけで呟いた。
―――羨ましいな、君には、長い時を一緒に過ごしてくれる人がいて。
「バーン、行くぞ。」
何も言わずじっと空を見ていた主人の声に、屍人形は頷き、歩を踏み出した。
―――さよなら。少しだけだけど、話せて楽しかったよ。
声は少し、いやかなり寂しそうに聞こえた。
少女の姿をした魔女は、振り向かずに心の中でこう言った。
(・・・この近くの森に、『黒腕』と呼ばれる魔女が住んでいる)
―――?
(おそらく、お前の存在に気付いている。そう遠くない未来に、きっと、会いに来るだろう。 あいつなら、お前と共に生きられるかもしれない。)
―――・・・・・・。


「お前、銃弾を弾き飛ばせるのではなかったのか?何故、あやつらごときにやられた。」
「・・・すごい速さで、たくさん弾が出てきて、対応しきれなかった。 修行が、足りなかったです」
「そうか」
「これから、どこへ行くのですか?」
「そうだな。ではお前の修行のために、南ヘライを攻撃中のメリア国軍の空爆地域に でも行くか。」
「えっ?!」




次はどの話をしようか?

黒腕の魔女    屍機巧

火疾り    ハイド・アンド・シーク




聞くのをやめる