手紙―後日談
貞治さん、ニニギさん、徹、幾人、やよいへ
あの日から数ヶ月たったけど、元気か?
俺たちは元気でやってる。
まぁ、ニニギさんはよく村にっつーか、百合さんのとこに来るから聞くまでもないけどな!
百合さんと、うまくいくといいな。
俺だってそれくらいわかるんだぜ! つんつん!
あれから、俺は患者として百合さんの研究に協力してる。
俺は頑丈だから新しい薬を試すのにうってつけだしな。
おかげで、症状はほんのちょこっとづつだけど軽くなってきたみたいだ。
記憶はないけれど、満月前後の1週間は、獣化してもユカリの指示をよく聞いて、2人・・・いや、2頭でパトロールをしているらしい。
あっ、この前は薬がよく効いて獣化しなかったから、満月見られたんだぜ。
ユカリと一緒に!
スッゲー嬉しかった!!
なんつーか、みんなのおかげだなって思ったから、ありがとうな!
獣のこととか、ユカリのこととか、本当のこと知ってびっくりしたけど、
今までユカリが俺の知らないところで苦しんでたんだって、知って、これからはその苦しさごとユカリと一緒に生きようって思ったからさ、
だから、事件を解決してくれて、知るきっかけを作ってくれて、本当に、ありがとう。
ところで、俺、近いうちに師範代の免状をもらえるみたいだ。
死んだユカリのとーちゃんがウチの流派の師範だから、なんか一歩近づけたみたいで嬉しい!
ユカリのとーちゃんは、あの銀の剣の使い手だったらしーんだ。
俺は、あの剣はつかわない。けど、ユカリのとーちゃんが村の人やユカリを思って守っていたように、俺もユカリや村のみんなを守りたいって、思ってる。
ヒマあったらまた遊びに来いよな!
司もみんなに会いたがってるぜ。特に、やよいに!
コウスケより
お久しぶりです。その節は本当にお世話になりました。お元気でしょうか?
コウスケは百合さんの研究に積極的に協力しています。
研究は順調に進んでいるようで、症状も少しづつ治まってきています。
満月の夜以外はほとんど発症しなくなりましたよ。
私も、先天的罹患として、獣の王として、百合さんに協力させてもらっています。
私の獣化は生まれつきなので、治療は難しいと百合さんは仰いました。
獣を抑えれば、他の発症患者を従わせる力もなくなりそうですから、私は構いません。
けれど・・・いつか人の姿で、コウスケと一緒に満月を見たいとも思ってしまいました。
先日、私は獣の姿で、コウスケは発症せず人の姿で満月を見ることが出来ました。
生まれて初めて見る満月がとても綺麗だったので、ついつい欲が出てしまいました。いけませんね。
私はもう、少し前までとは比べ物にならないほど幸せだというのに。
貞治さんが私たち・・・ライカンスロープについての研究と発表を徐々に進めてるとうかがいました。
ありがとうございます。
学術的な方面から少しづつ世間の認識が広まっていったら、いつか、私たちが受け入れてもらえる未来が来るかもしれません。
今回の件の後、出張から帰ってきた母に相談し、新しい住民の方にもこの村の本当の姿を説明することにしました。
村のご老人方と綿密に打ち合わせて、まずは大人の患者の方から、次に学校の関係者さん、他の大人の方、と怖がらせないように少しづつ打ち明けていくつもりです。
少し・・・いえ、とても怖いですが、コウスケが一緒にいてくれるから、きっと大丈夫です。応援していてくださいね。
話は変わりますが、貞治さんとニニギさんと一緒にいらした楓さんをテレビでおみかけして、コウスケと2人で驚きました。
テレビにでるような方とお会いしていただなんて、人生何が起こるかわからないものですね。
今回のことも、そうですね。
私が諦めていたことを、皆さんはつないで、覆してくださいました。
何が起こるか、わかりませんから、諦めてしまわずに、頑張りたいと思います。
父のように村の人たちを守れるよう。
・・・そして、いつか、コウスケと二人で満月を見られるよう。
よろしければ、是非また村に遊びにいらしてくださいね。
良い方向へ少しづつ変化した村をお見せできればと思います。
ユカリより
ご無沙汰しています。その後はいかがですか。
徹くんとやよいちゃんは、身体に変化はありませんか?
何かありましたらすぐに連絡をくださいね。
おかげさまで、研究は以前よりも順調に進んでいます。
コウスケくんやユカリちゃんが協力してくれて、
ニニギさんが頻繁に資料をもってきてくださるおかげですね。
・・・辺鄙な村に月に何度もいらっしゃるのは負担になっていないでしょうか?
ニニギさんとお話して、休憩にお茶を飲んだり、一緒に散策する時間は心が安らいで、とてもありがたいです。
でも、私のような・・・夫を殺し、患者たちを痛めつけていた私には、このような幸せは身に余るような気がして
(この後、数行分が消されている)
ユカリちゃんが夫の感染源だと知った時、どうしていいかわからなくて、頭の中が真っ白になりました。
けど、幾人くんが、徹くんが、危険をかえりみず、力でねじ伏せるのでなく、言葉で伝えようとしている姿を、
貞治さんの、やよいちゃんを守る姿を、
ニニギさんの仲間を・・・私までもを思いやってくれる姿を、
やよいちゃんが山犬となったユカリちゃんを恐れず撫でる姿を見て、
そして皆さんの優しさに満ちた言葉を聴いて、
前を向こう、と、思ったのです。
私が2年の間、一人で研究を続けてきたのと同じように、
ユカリちゃんも孤独の中で苦しんできたのだと、わかりますから。
だからこれからは、一人ではなく皆で、幸せになるよう頑張っていきますね。
神社に奉納されている銀の剣を調べさせてもらい、銀のイオンが病原体に・・・と、これはニニギさんに個別でメールします。
貞治さんにもまたメールを出しますね。発表の件、ありがとうございます。
機会がありましたら、また村にいらしてくださいね。
ユカリちゃんもコウスケくんも喜ぶでしょうから。
それでは、くれぐれもご自愛ください。
百合より
(GMこと なまより)
ここまで読んでくださってありがとうございました。
スカイプチャットでのオンラインセッション、現代劇、そしてクトゥルフ風改造ルールと、初めてばかりのセッションで、プレイ中はあたふたしどおしでしたが、ログをサイトにアップするにあたり読み直したら、やっぱりひどい進行。
ここはこうすればいいのに、という反省の連続でした。
それでもプレイヤーの皆さんが楽しんで、いっぱい考えて、驚いて、NPCにまで親切にしてくださったことは、とってもありがたかったです!
GMの役割上反応しませんでしたが、皆さんの面白発言にはモニタの向こうで爆笑してましたし、コウスケいじりは「いいぞもっとやれ」でした。
通り魔であり狂科学者の百合さんにまで好意をもってくださるとは予想外すぎて、遠山先生が百合さんに恋をしているエピソードを闇に葬ったほどです。
シナリオ上、親しんだNPCと闘う展開になってしまう(選択次第では百合ふくめ全てのNPCはプレイヤーと敵対する可能性がありました)のですが、プレイヤー皆さんが諦めず、すばらしい結末にたどり着いてくださって、感謝です!
TRPGブームに乗じて、TRPGの面白さをプレイヤーさんに、そしてこのリプレイを読んでくださった方々に少しでも伝われば、GM冥利に尽きるというものです。
それでは長々と失礼しました。
また、遊んでいただけたら嬉しいです。
2012.11.24 なま
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